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過去の話

「少し、昔の話をしようか」

ある晴れた日の午後、柔らかい冬の陽射しの射すカフェテラス。
偶然、久し振りに遭った友人の口調は数年前と変わらなかったが、
年経たせいか、どこかくたびれたような印象を受けた。

「そう、あれは六……いや、七年前のことだった……」
「七年前?」
目の前に坐る男は、何処か、遠くを見るような目で、回想するように語り始める。

「ああ、七年前だ。あの頃は毎日が楽しかった。
夕方に集まって、夜を明かすほど遊んで朝帰りするような、そんな学生時代。
今考えると、なんであんなに遊び続けられたのかとは思うが、つい最近、
あの頃を一瞬思い出してしまうような体験をしたよ」
「へぇ……どんな?」

遠い目をしながら、目の前の男は続ける。


「昨日の話だ。さっさと家に帰って寝るつもりだったんだが、
上司と部下に食事に誘われてしまったんだ」

暖かいアールグレイのカップに口をつける。
独特の香りが鼻の奥を刺激した。

「へぇ、それはいいじゃないか」
仕事上がりに同僚と食事をして、くだらない話や悩み事の相談などで盛り上がる、
そんな光景を私は浮かべ、そう返した。

「ただな、昨日は給料日前だった。俺は全然金がなかったんだ。
だから、上司に言ったさ。オゴリなら付き合いますヨってな」

目の前の男は昔、いつも「金がない」が口癖だったような男だが、
今もそんな瞬間があるらしい。
雀荘のスタッフとは楽ではないと言う事なのだろう。

「そうすると上司が言ったんだ。「いつもオレのオゴリやん!たまにはお前がオゴれや!」ってな。
金がないんだから、無理だって思った瞬間、その七年前を思い出したのさ。
ほら、いつだったか。カシオゴリって覚えてるか?」

貸し奢り……。
私は過去に行われた、まるでイジメでしかないその所業を思い出した。

***

―――ある日の話。
いつもカラオケの部屋代を奢らされていた、Tという奴がいた。
この時点で大概な話なのだが、いつも通りに歌っていたある日、Tが突然言い出した。
「今日、オレ金もってねーよ」

そこで、その場にいたYという男が何かに閃いた。
それが、この恐ろしき所業……貸し奢りだ。

金を持っていなくても、強制的に金を借りさせられ、しかもその金で奢らされる……。
単純に考えれば、その、金を貸す奴が奢ればいいと思うのだが、周りの空気がそれを許さなかったのだ。

***

「そうさ。その貸し奢り……あの頃の俺は奢られる側だったが、
まさか、俺がその奢らされる側に立つことになるとは思わなかったよ」

街中を走る車の列を眺めながら、目の前の男―――石田は語った。


「石田……それは災難だったな……」
私は昔、何かのマンガで見た話を思い出した。
地球は丸いのは、いい事や悪いこと、どんなことをしても、全て自分に戻ってくるからなのだと。


「いつだったか……俺は、「オゴリのラーメンは美味い」と言った事があった。
ああ、そりゃ美味そうだったさ、ムリヤリ金を貸し、奢らせて食うラーメンが不味い訳がないだろうさ!」
声を荒げ、やりきれない表情をしながら慟哭したその男は、過去の所業にその身を焼かれ、
そうしてまた、夜の街へ消えていったのだった。
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非公開コメント

その上司、君のご飯代かなり出してるよ( ̄△ ̄;)ムッ! ( ̄ ̄;) ムカッ!

貸し奢り・・・いい言葉を覚えたよ!
今後使わせていただきます。

僕は金を貸して、さらに飯を奢ってます。
これも貸し奢り??

>>>ルパン4世さん
ごちそう様です><

>>>よっしーさん
部下に貸し奢らせるのだけは止めてあげてくださいね><

>>>くっしーてんちょ
ひどい一方通行ですね。
貸し奢りは貸した人が奢ってもらえるシステムです。
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