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14,November

寒くなってきた週末の夜、懐かしい顔ぶれが揃った同窓会が終わった。
夜の冷気に晒されながら、何となくケータイで時間を見てみると、終電までは1時間。
実際のところ、私は終電がなくなってしまっても、歩いて帰れる距離だから、
そんなに気にしていなかったけれど、わざわざ京都から出て来ている友人は、
明日も仕事で大変だとぼやいていた。
カレンダー通りに休みを取れるような仕事は羨ましいよな、
と、帰宅組と二次会組に分かれ、私と彼はゆっくりと駅に歩いていった。

飲み屋だらけの商店街なので、さっき別れた二次会組と似たようなグループばかりとすれ違う。
羽織ったコートのポケットに手を突っ込むと、アルコールが入って熱くなった頬を、冷たい風が撫でる。
高架道路をくぐる横断歩道で、赤信号が点灯した。
人の流れが止まり、私たちも立ち止まる。すると、隣にいた友人がつぶやいた。
「なんか、ここらへん歩くんも懐かしいな」
「ん? あ、確かにそうやな。モンテ、まだあるし」
右側に目をやると、どこか古臭い、黄色い電飾の輝く雑居ビルが目に入った。
昔よく通ったゲーセンだ。
確か、あの店だったか。
高校入試を控えた前日、何を思ったのか、私はあのゲーセンで遊んでいた。
格ゲーの対戦台に並んでゲームをして、普段通りに帰ったその翌日、
偶然試験で隣の席に座っていたのが、昨日の対戦相手だったのには驚かされた。

私が驚いていると、前夜、体力1ドット差で削り勝った私に対して、
「昨日のようにはいかへんからな」
と、一言、彼は私に言って、机に向かう。
そして4月、無難に入試を通過し、新しいクラスに馴染めるかなと考えていた私の机2つ前の席に、彼は座っていた。

以来、ことあるごとに彼……青木は私をゲーセンに誘って来た。
格ゲーだけでなく、パズルゲームにシューティング、麻雀……。
互いの腕を競い合いながら、私たちは時間とコインを消費していった。
そんなある日の帰り道。
ゲーセンの近くの牛丼屋で肩を並べて牛丼を食べていると、突然、青木は言い出した。
「俺、好きな奴が出来たんや」
話を聞いていると、どうやら、私が少し気に掛けていた娘のことだったようで、
今度の誕生日に何を贈るかということを相談された。
またか、またツレと好きな娘が被ったのか……。
やり切れない思いを感じたが、中学時代にも一度あった事だったので、
私は今回も、落ち着いて相談相手になってやることにした。


そして、それから3年後の夏。
青木に彼女が出来てからも、私たちは、早過ぎる黒板の文字を追いながら、
週1、2回程度のペースでゲーセンに通い続けていた。
そんなある日、1人で何となくゲーセンに立ち寄ると、仲良くなった別の知り合いに声を掛けられた。
「おい、アレ知ってる?」
「ああ、なんか毎日凄いよな。ギャラリーとか」
世紀末の冬、彗星のごとくゲーセンの店先に現れた、黒く大きな筐体。
クラブ風のミュージックに合わせて、青や赤に輝く電飾に、
普段ゲーセンに来ないような人も、思わず、足を止めて見てゆく。

ビートマニア

当時のアーケードを賑わせたゲームのひとつだ。
プレイ料金が高かったこともあり、私たちは敬遠していたのだが、ちょうどその日から、
その店ではプレイ料金が半額になったところだったようで、行列が出来ていた。

「お前、ちょっとやってみろよ」
知り合いに促され、ギャラリーの多さに尻込みしながら、筐体の前に立った。
コインを投入し、腹に響く音が、筐体から聞こえてくる。
スタートボタンを押して、私は即席のディスク・ジョッキーを体験した。

そのプレイで、私はビートマニアの魅力に取り付かれた。
一曲目を軽くクリアして、二曲目辺りでターンテーブルの扱いにも慣れ、
三曲目をプレイするとき、私の目に、ある曲名が映った。


『20,November』


11月20日。
その日は奇しくも、私が密かに想っていた、友人の彼女の誕生日だったのだ。
私は衝動的にその曲を選択した。
すると、後ろで見ていた知り合いが、
「いや、それ、初心者には無理やで……」
「えっ?」
筐体から聞こえてくる歓声が止み、曲がスタートする。
2曲目とは段違いの難易度だった。
リズムは何となく理解できたのだが、手が少し追いつかない。
BadとPoorを連発し、あっさりとゲームオーバーになってしまった。
「まぁ、お前なら練習したらすぐいけると思うわ」
うなだれる私に、知人は声を掛けてきた。その日から私は、少しずつ練習を始めた。



そして、11月のある日。
青木に誘われて、私は、彼の彼女と3人でゲーセンに行った。
いつもの様に格ゲーでお互いのライフゲージを削りあい、青木の隣では、彼女がゲームを見ていた。
私がそのゲームに勝つと、青木は私に声を掛けてきた。
「俺ら、あっちでぷよってくるわ」
「おう、じゃ、俺これ終わったらビーマニ行ってると思う」
それから連続乱入で3人くらい倒した後、4人目の対戦相手に負けてしまい、ビートマニアの筐体に向かった。
ぷよぷよの筐体の方に目をやると、二人で楽しそうにゲームをしている。
私は邪魔するのも悪いと思い、そのままビートマニアのギャラリーに紛れ込んだ。


3ヶ月間、平均すると1日1プレイ程度の割合だったが、私の腕は格段に上がっていた。
ビートマニアは2ヶ月ほど前にバージョンアップしたこともあって、
ギャラリーはかなりの数が居たが、程なくして私の番が回ってくる。
私がコインを入れて1曲目のソウル・ミュージックをクリアしたくらいに、
青木と彼女がギャラリーに混ざってきていた。
後ろを向いて、軽く手を振る。
そして私が選曲したのは、80年代風のJ-POP曲だった。
鍵盤を叩き、あっさりとクリア。
「お前、ビーマニやっててんな」
青木とゲーセンに来ることが少なくなって以来、そう言えば、彼の前でプレイするのは初めてだったのだろうか。
「ええ曲やなぁ」
隣に居た、彼女が私に声を掛けてくる。
「俺はどっちかっていうと、この曲の方が好きやけど」
私はそう言って、ターンテーブルを回し、曲を選択する。
まぁ、ちょっとくらいイイトコ見せてもいいやろ? 青木。
筐体から歓声が上がり、曲名が表示される。
「20,November」そう。キミの誕生日を祝う曲や。



「まぁ、結局ユカとは別れたけどな」
信号が青になり、私と青木は横断歩道を渡った。
昼も夜もないような明るさのアーケードを抜け、工事中の百貨店の前の信号を渡り切り、立ち止まる。
その話は卒業後、風の噂程度に聞いていた。大阪と東京の遠距離恋愛はやっぱり難しかったのだろう。
何となく、ドリカムの歌が頭によぎったが、あれは確か大阪に通い妻してる娘の話だったよな……。
そんなことを考えていると、
「よし、じゃあ、また今度、やな」
「ん、ああ。またな」
JRの駅に向かって青木は歩いていく。彼の背を見送り、私は逆側に歩いていった。
「そういや、そろそろか」
ケータイの日付を見てみると、11月14日。
あの年以来、何となく、毎年11月20日になると、筐体の前に立っている。
今では、見つける事の方が難しくなっているけれど、何処かのゲーセンの鍵盤を叩きに行こう。
私はそう考えながら、阪急の駅に歩いていった。
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一言で言うならば、切ないね・・・

純愛小説とか書いてみたらどないですかぃ?

いっしー…彼女作ったらいいのに…(>_<)

11/20の誕生日・・・・まさか笑星・・・!!!

石田さん・・・そっちの道に走っていたのか!

>>>Kさん
その一言で、書いて良かったと思います。


>>>ガロン社員
いや、こういうのじゃダメですかぃ?


>>>真悟さん
時期が来ればいずれ、そういう人も現れ……


>>>アルパカ氏
もう一度読み直してください。

この青木さんはa?b?

切なす!!\(-o-)/
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